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インタビュー2010-08-20

園長が語る上野動物園の“これまで”と“これから”-小宮輝之園長インタビュー<前編>

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 日本人なら誰でも知っている動物園、「上野動物園」。その園長自身が140年にわたる歴史を描いた「物語 上野動物園の歴史」(中公新書)が発売された。刊行を記念して、上野経済新聞では小宮園長にインタビューを行った。これまでの上野動物園の歴史、そしてこれからの上野動物園、さらには来年やって来ることが決まっているあの動物についてまで…知られざる上野動物園の側面をひもとく。

“安い動物”こそが面白い!

-どうして上野動物園の歴史を書こうと思ったのでしょうか?

1962(昭和37)年ごろの東園の様子(公財)東京動物園協会

8年前の上野動物園120周年の時に動物園全体の歴史を書きました。それがこの本のベースになっています。125周年の時に「125年の歴史を作った動物たち」として本を出版したかったのですが間に合わなかった(笑)。それで、前史も含めて「140年の歴史」ということにしました。

-小宮園長自身、飼育係としてのキャリアはアルバイトから始まったとうかがいました。

中学校のころから動物愛好会の会員として上野にはなじみがありました。アルバイトから就職して初めは多摩動物公園に入ります。それから14年間飼育係として現場経験を積みました。

-飼育係時代にはどういう動物を手がけていたのでしょうか?

安い動物ですね。彼らに敬意を表してそう言ってるのですが、ヒグマ、ツキノワグマ、キツネ、イノシシ、シカ、ヤク、ヤギ、ロバ、シチメンチョウといった動物です。「高い動物」の飼育員はつまらないんだよね。

-そうなんですか?

ゾウならば最初1年はふんの掃除だけ。ゴリラやパンダも新人のころは先輩に言われたことしかできません。ところが、安い動物だと初めから任されちゃうんです。「好きなように飼いなさい」ということで。だから、1年のうちに繁殖から死まで、飼育係としていろいろなことを経験できました。

-飼育係としてはパンダやゴリラなどのスター動物が魅力じゃないかと思ったのですが…。

採用の面接をしている時にも、「パンダがやりたい」と言っているような人は夢だけだなと思っちゃう。動物のことを本当に知っていたらそうは言わないんじゃないかな。

クマの冬眠に5億円!

-小宮さんが一番印象に残っている動物は何でしょうか?

園長になってからだとやっぱりクマですね。動物園としてはじめてクマの冬眠を成功させたんです。飼育係時代に最初の担当がクマだったのですが、冬になると眠そうにしていたんです。何とか冬眠させたいと30数年間ずっと思っていたことが実現しました。

-クマの冬眠というのは大変なんでしょうか?

真剣にやればできます。だけど、動物園では普通、日本の動物にはお金をかけないんですね。日本の気候の中で日本の動物を飼うんだから小屋だけあればいいだろうっていう考えなんです。30年前にも一度冬眠にチャレンジしたことはあります。寝室に入って眠そうにしたんだけど、やっぱり起きてしまう。光が入ってくるし、音もうるさい。ちゃんと寒くして光が入らないようにして防音装置を作ればできるはずだと思っていました。上野動物園では、宝くじ協会から寄付していただいた5億円を使ってクマ舎を改修して冬眠を実現しました。ちゃんと設備を整えればできるんです。冬でもエサをやっておけば起きているからいいかと思ってしまいがちですが、それはクマの生理に合った飼育ではありません。

82年前に誕生した日本初の柵のない猛獣舎であるホッキョクグマの展示施設(公財)東京動物園協会

-著書で自らを「動物園オタク」と称していますが、どれくらいの動物園を回られたんでしょうか?

日本の動物園は全部見て回ったけど、世界ではまだ80園くらいしか…オタク仲間には100園を超えた人もいます。

-そんなに見回っている小宮園長が、“ここはすごい”と思う動物園はどこでしょうか?

やっぱり一番は上野でしょう

-(笑)。旭山動物園はどうでしょうか?

旭山動物園がすごいのは、他の動物園の真似をせずオリジナルでアイデアを生み出しているところ。職員もみんな生え抜きですしね。動物園の園長は役所から来ている人が多いですが、旭山は違う。旭山動物園の飼育係の人たちは大雪山などの野生のフィールドを持って、野生の動物を見ています。あとは「富山市ファミリーパーク」。日本の動物や里山の展示しっかりと行っている動物園ですね。それから「沖縄こどもの国」も沖縄の動物や家畜、家禽(かきん)を大事にしています。旭山もクマゲラやホシガラスを飼育していたことがあり、日本中でそこにしかいない動物がいました。

-日本の動物を展示するということが重要なのでしょうか?

上野動物園で飼育している沖縄の在来豚、「アヨー」(画像左)と「アグー」(画像右)

外国の会議に行ってアフリカの動物の話をしてもダメなんです。先日の国際会議でオオサンショウオの話をしたらみんな感激してくれました。逆に日本の動物について、しっかりと展示や研究をしていないようでは軽蔑(けいべつ)されてしまいます。日本の動物についての研究・展示をしっかりやりながら、外国の動物を展示しないといけません。

-上野経済新聞でも以前、在来家畜の展示を取り上げましたが、そのような意図があって展示を行っているんですね。

そうです。

後編に続く

【著書紹介】

「物語 上野動物園の歴史」
小宮輝之(著)
定価:924円
ISBN:978-4121020635
新書:292ページ
1872(明治5)年、湯島の展覧場にオオサンショウウオなどが展示されて以来、140年の歴史を持つ上野動物園。明治期には、ニホンオオカミやトキが飼われ、徳川慶喜がナポレオン三世からもらったウマも暮らしていた。戦中には猛獣殺害という悲劇もあったが、今では飼育種数では世界有数の動物園に育ち、教育・環境保全などでも重要な役割を担っている。園長自身が激動の歴史を、代表的な動物たちのエピソードとともに案内する。

【プロフィール】

上野動物園 小宮園長

小宮輝之(こみや・てるゆき)1947(昭和22)年東京日本橋生まれ。明治大学農学部卒業後、多摩動物公園の飼育係となる。上野動物園、井の頭自然文化園の飼育係長から、多摩、上野の飼育課長を経て、2004年から上野動物園園長。

(文責:萩原雄太、西田陽介/上野経済新聞)

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