エリア特集2013-03-22
3月7日はメンチカツの日!広域上野圏にあるメンチカツ特集
あまり知られていないかもしれないが、3月7日は「メンチカツの日」と制定されている。下町風情の残る広域上野圏では、各所の商店街にある肉店でメンチカツが提供されており、地元客はもちろん遠くから食べ歩きに来る人も多い。そこで上野から下谷、千駄木、谷中、西日暮里と人気の7店を訪ね歩き、その製法や特徴を聞いてきた。肉のプロが作るメンチカツには、たくさんのこだわりが込められていた。
■肉の大山



上野アメ横で、安くて美味しい肉料理店として人気の高い「肉の大山」。もともと精肉店で、15年ほど前に店内をレストランに、店頭を惣菜販売と立ち飲みスペースにしたという。メンチカツは惣菜の中でも人気が高く、3種類が提供されている。写真は左からやみつきメンチ、大山特製メンチ、匠の和牛メンチ。やみつきメンチは今回紹介する中でももっとも安くコスパも良い100円。匠の和牛メンチはもっとも高い400円だが、150gほどと平均的なメンチカツの1.5倍ほどのボニュームがある。
「3種類のメンチは、牛肉と豚肉の割合が違う。匠の和牛メンチは牛100%。大山特製メンチとやみつきメンチはあいびき肉で、特製メンチの方が牛の割合が多い。一番人気が高いのは、値段が手頃なやみつきメンチ。1日に500個出る。すべて手作りなのでタネを練るだけでも重労働だけど、手作りで、できたてものを提供したい。食感も良いし、毎日食べても美味しい」と同店の名物おばちゃん。
▼メンチ特徴
「やみつきメンチ」=100円、「大山特製メンチ」=200円、「匠の和牛メンチ」=400円
肉:やみつきメンチ=あいびき肉、大山特製メンチ=やみつきメンチより牛の割合の多いあいびき肉、匠の和牛メンチ=牛肉衣:荒めの生パン粉
油:サラダ油
▼店舗情報
営業時間:11時~23時(日・祝日は22時まで)所在地:台東区上野6-13-2
電話番号:03-3831-9007
http://www.ohyama.com/nikunoohyama.html
■肉のタカオ



上野松坂屋向かいの、裏道に面した精肉店「肉のタカオ」。総菜や弁当メニューが豊富で、近隣のサラリーマンやOL、主婦らの人気を集めている。メンチカツは同店創業の昭和20年から提供し、現在も当時と変わらない方法で作っているという。
「牛肉が多いとしつこくなるので、8:2の比率で豚肉を多く入れ、さっぱりするようにしている。お客さんからも、もたれなくて良いと言われる。油はラードを使っているので、植物性油とは風味が格段に違う。揚げ置きはせず、注文が入ってから揚げるためお昼のお弁当を買う時間は混みがちだが、それでもみなさん買いにきてくれている」と同店二代目店主の高尾憲治さん。
▼メンチ特徴
「メンチかつ」=120円
肉:あいびき肉(豚8:牛2)衣:荒めの生パン粉
油:ラード
▼店舗情報
営業時間:9時~18時(惣菜の販売は10時30分~販売)定休日:土曜・日曜・祭日
所在地:台東区上野1-19-12
電話番号:03-3831-6823
http://tabelog.com/tokyo/A1311/A131101/13118746/
■肉のえびすや



入谷駅から徒歩3分、鴬谷駅から徒歩5分ほどの下谷エリアにある精肉店「肉のえびすや」。40年にわたり同地で営業している。創業当時から販売する惣菜類も人気で、特に20年ほど前からはニーズの高まりを感じたという。なかでも一番人気なのがメンチカツ。
「A5ランクの和牛を使っているので、その美味しさを活かすように他はシンプルにしている。ただ牛だけだと重たくなるので、豚肉も入れてさっぱりするようにした。以前はラードで揚げていたが、さっぱりしたものが求められる時代に変わってきているので、20年ほど前からサラダ油を使っている。そのため冷めても美味しいものの、揚げたてを提供したいので、夕方の混む時間以外は注文が入ってから揚げている」と同店二代目店主の井上茂さん。
▼メンチ特徴
「特製メンチ」=150円
肉:あいびき肉(A5ランク牛肉を使用)油:サラダ油
▼店舗情報
営業時間:9時~19時(惣菜の販売は11時~販売)定休日:火曜日
所在地:台東区下谷2-13-8
電話番号:03-3873-0395
http://tabelog.com/tokyo/A1311/A131104/13153220/
■山本畜産



千駄木駅から徒歩5分ほど、根津神社からほど近い場所にある精肉店「山本畜産」。昼と夕方に提供している惣菜の人気は高く、販売時間になると地元の主婦たちが入れかわり立ちかわりに訪れる。メンチカツは肉と玉ねぎにこだわっているという。
「うちのメンチカツは、切ったときに濁った汁が出る。これが本当の肉汁で、透明の汁が出るものは脂が溶けているだけ。肉の中に脂肪分が溶け込んだ上質な和牛と銘柄豚を使っているので、こうなる。玉ねぎは、新たまねぎだと水分が多いので、秋に収穫されたものが揚げ物と相性がいい。北海道で秋に採れたものを冷蔵庫でストックして使っているが、収穫から半年後くらいが甘くて一番おしくなる。玉ねぎは炒めたあと、1週間寝かしてから使っている。こうすることでさらに甘味が出る」と同店代表の山本さん。
▼メンチ特徴
「自家製メンチカツ」=170円
肉:国産のあいびき肉(豚5:牛5)玉ねぎ:秋に収穫した北海道産
衣:きめの細かい生パン粉
油:大豆白絞油
▼店舗情報
営業時間:10時~19時30分(惣菜は11時20分~12時30分、16時~18時に販売)定休日:日曜
所在地:文京区千駄木2-10-11
電話番号:03-3828-5014
(食べログ)http://tabelog.com/tokyo/A1311/A131106/13124386/
■肉のサトー



谷中銀座の精肉店「肉のサトー」。谷中銀座といえばメンチカツが名物だと言われるほど浸透しているので、平日は地元客、休日は観光客と多くの人が訪れる。同店の店頭にも、取材できた有名人のサインがたくさん置かれている。
「この辺はメンチカツを売る惣菜店が多いけれど、その中でもうちが唯一の現役の精肉店。だからいい肉が仕入れやすい。肉は95%は牛で、A5ランクのものも使っている。豚を5%ほど入れているのは、冷めたときに固くならないため。またこの辺は年配客が多いので、もたれにくいようにしている。遠赤外線フライヤーを使用し、大豆油をメーンに、風味を出すために少しラードを入れて揚げている。だから家で温め直してもおいしく食べられる」と同店の安斎代志範さん。
▼メンチ特徴
「谷中メンチ」=150円
肉:あいびき肉(牛95:豚5)牛肉にはA5ランクのものも使用衣:耳を多めにした生パン粉
油:大豆油90:ラード10
▼店舗情報
営業時間:10時30分~19時30分(惣菜は12時~18時に販売)定休日:月曜
所在地:台東区谷中3-13-2
電話番号:03-3821-1764
http://www.yanakaginza.com/koten/sato/index.html
■肉のスズキ



谷中銀座のもう一つの人気店「肉のすずき」。昭和8年に近江牛専門の精肉店として創業し、現在は肉を使った惣菜を提供。メンチカツは戦後すぐからを提供していて、昔は「特製メンチカツ」という名前だったが、「食べると元気が出る」という客の声から「元気メンチカツ」という名前になったという。
「もともと近江牛の専門店なので、上質な牛肉が手に入る。肉の配合は日によって多少違うが、基本的に栗毛和牛の肩ばら肉をメーンにA5ランクの松坂牛の背油、オーストラリア牛のもも肉を使っている。以前は和牛だけで作っていたが、少し軽さを出したといと考え、2年ほど前からオーストラリア牛を混ぜるようにした。油はラードに少し牛脂を溶かしているので、衣に甘味と香りがつく。もたれにくいように、油は1日3回交換している。ソースをかけずにそのまま食べてほしい」と三代目店主の鈴木和博さん。
▼メンチ特徴
「元気メンチカツ」=200円
肉:和牛、オーストラリア牛衣:白い部分だけのきめ細かいパン粉
油:ラード、牛脂
▼店舗情報
営業時間:11時~18時定休日:月曜
所在地:荒川区西日暮里3-15-5
電話番号:03-3821-4526
http://www.yanakaginza.com/koten/suzuki/index.html
■北島商店



西日暮里駅から道灌山通り沿いに徒歩10分ほどの場所にある「北島商店」。メンチカツサンドが大きな人気を集め、空港やデパ地下などで販売されていることで知る人も多いだろう。北海道から沖縄まで、全国各地からお取り寄せの注文が来るという。もちろんメンチカツ単体でも提供。
「お客様の健やかな生活を願い、元気をお届けすることをモットーにしている。そのため、厳選した国産のあいびき肉に玉ねぎをたっぷり入れ、ソフトな味でヘルシーに仕上げている。タネを小麦粉と卵、牛乳を混ぜたトロにくぐらせてからパン粉をつけて揚げることで、ケーキのようなふんわりした食感の衣にしている」と同店店主の北島保男さん。
▼メンチ特徴
「メンチカツ」=140円(本店限定価格)
肉:国産牛肉、国産豚肉玉ねぎ:北海道産(まれに佐賀産、淡路島産の場合もあり)
衣:小麦粉、卵、牛乳を混ぜたトロを使用
油:サラダ油
▼店舗情報
営業時間:9時~19時定休日:日曜、祝日
所在地:荒川区西日暮里1-41-3
電話番号:03-3806-1137
http://www.kitajima-meat.com/
【終わりに】
一口にメンチカツと言っても、これだけ各店の味やこだわりに明確な違いがあったことに驚いた。肉だけを見ても、牛の旨味だけでいくか、豚の軽さをプラスするのかでおのおの考えが違う。油も動物性は風味が良いが、植物性はもたれにくく温め直しに強いという違いがある。そのうえで肉と油の組みあわせが考えられている。パン粉はほとんどの店で生パン粉が使われていたが、それも白い部分だけのきめ細かい方が固い衣にならず良いという考えと、耳が入っていたり、荒めだったりしたほうがサクッとして食感が良いという考えに分かれた。こうした特徴を理解しておくと、好みのメンチカツをみつけやすいだろう。これだけこだわりの逸品が一つ数百円で楽しめるのだから、街の肉店のメンチカツの人気が高いわけである。
(文責:平田順子、西田陽介/上野経済新聞)