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みん経トピックス

特集

インタビュー2009-07-08

日暮里育ちの新フォント「修悦体」の魅力に迫る(前編)

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2009年6月現在、工事中の囲いが張られているJR日暮里駅。その日暮里駅に一風変わった書体の案内板が設置されているのをご存知だろうか?その看板を作った人物は佐藤修悦さん。なんとデザイナーではなく現役の警備員だ。果たして佐藤修悦さんとは何者なのか?

足元に転がっていたガムテープを無意識に…

まず「修悦体」が誕生した経緯を教えてください。

佐藤修悦さん 2003年に新宿駅の地下通路改良工事を行なっていた時に、お客さまを案内する旅客誘導の係に就いていました。最初のうちは通路が狭くなるくらいで特に迷うようなことはなかったのですが、ある日突然使い慣れていた通路が遮断されて迂回しなければならない状態になってしまいました。

その時はもう一大事でした。とにかく使い慣れているお客さまでもどっちに行ったらいいのかわからない。通れなくなっちゃったから、改札すらもどう行ったらいいかわからない。朝から晩まで何十人、何百人と同じ質問の繰り返しでした。これは何とかしなきゃいけないということで、早く伝わる方法はないかと考えました。

それで案内板を作ろうと?

これはうそじゃないんですが…。足元に転がっていたガムテープを無意識に手にして、工事の仮囲いに番線案内(1番線、2番線などの案内)や改札口の案内を書いている自分に気が付きました。でも作ってしまった結果、物の見事に、何も言わなくてもお客さまが自分の判断で改札に移動し始めました。これは「やった!」と思いました。

しかし、勝手にそのような案内を作っても大丈夫なのでしょうか?

「いいんだろうか?」とは思いました。工事の監督に許可ももらわずJRにも何も言っていない状況で、無断でやっていましたから(笑)。でもガムテープですから、簡単にはがせるので怒られたらやめようと思っていました。

「佐藤さん、これはいい」

お客さんの反応としては上々だったわけですね。

お客さまからは「わかりやすい」「こういう案内板が欲しかった」と言っていただけてはいました。そして、とうとう工事担当の総責任者である工事担当助役さんの目に留まったのですが、「佐藤さん、これはいい」と言ってくれたんです。その時はもう天にも昇る気持ちでした。

総責任者のお墨付きさえあればもう大丈夫ですね。

工事現場には白と黒と黄色のガムテープしかないのですが、その言葉をいただいてから「できれば赤と青と緑のガムテープを買ってください」と申し出たんです。すぐに買ってくれました。なので、埼京線、中央線、山手線という電車の色に合わせた案内板を作れるようになりました。

それからは案内板を作り続ける日々を?

公に作成する許可ができたので、それからはヒートアップする一方です。「佐藤さん、こっちもこっちも」って(笑)。最大7面くらいの壁に案内を作っていましたね。7面に張らなければならないくらい通路が複雑だったわけですが…。

上の人から注意を受けることはなかったのですか?

もちろん新宿駅からクレームが来てもおかしくないし、現場監督にしても「案内板よりも誘導に専念しろ」と注意するのが普通です。とにかく1文字1メートル四方くらいの大きな文字で、番線と改札とトイレに絞って案内を出しました。それがわかりやすくて受け入れてもらえたのかなと思っています。

新宿駅から日暮里駅へ

日暮里駅

写真提供=世界文化社

その後、新宿駅から日暮里駅に移られたわけですが。

2007年ごろに日暮里駅に移った時も、ちょうど通路の切り替えの時期でした。だから、もうちゅうちょなく、監督さん無視、駅長には無届けで作っていました(笑)。とにかくお客さまに聞かれた施設はお客さまの迷う所だろうと思ったので、聞かれる場所をその都度「改札」やら「トイレ」やらを作っていましたね。

日暮里駅でも大規模な工事を行なっていましたね。

日暮里も新宿以上に通路がガラッと変わったので、今までの通路がなくなったり、トイレが正反対の場所に移ったりしていました。駅から怒られるということはすっかり忘れて、もう壁だろうが何だろうが貼っていましたね。

やはり日暮里でも怒られることはなかったのでしょうか?

ある日、日暮里の駅長さんが来たんです。「問題があればはがしますが…」と言ったら、「佐藤くん、これいいね」と。まさか新宿駅の助役と同じせりふを聞かれるとは思いませんでした(笑)。それから、やはり日暮里でも赤と青と緑のガムテープをすぐ用意していただきました。

修悦体の人気の秘密をご自身ではどのように分析していますか?

これがまさかガムテープでできていると思わない、それとまさか普通のガードマンのおじさんが作っていると思わない。あとは字が変なこと。初めにネットで紹介されて、それからテレビの取材も来ていただけるようになり、新聞の取材も殺到するようになりました。

後編に続く

【著書紹介】

「ガムテープで文字を書こう」
佐藤修悦(著)
定価:1,500円
ISBN:978-4-418-09205-5
B5変形判 96ページ
文化祭、体育祭などイベントでプラカード作りに役立つ温かみのある書体の実用書。話題のガムテープアーティスト・佐藤修悦さん初の監修本。これ1冊で誰でも簡単にガムテープで文字が書ける。

【プロフィール】

目指せ甲子園

佐藤修悦岩手県出身。2003年、JR新宿駅の工事現場で警備員として勤務の傍ら、ガムテープを使った案内標識を作り始める。見やすく温かみのある独特の字体がインターネットや口コミで話題となり、「修悦体」として人気を確立。2007年よりJR日暮里駅で同じく業務の傍ら、「修悦体」の制作を手がけた。

(文責:萩原雄太、西田陽介/上野経済新聞)

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