東京都美術館が90周年 木と再生テーマに人間存在や生命感じる作品多数
上野公園内の東京都美術館(台東区上野公園、TEL 03-3823-6921)で現在、開館90周年記念展「木々との対話-再生をめぐる5つの風景」が開催されている。
同展は1926(大正15)年にオープンし、90周年を迎えた東京都美術館の記念展。「暮らしに深く関わる木は命ある存在であり、希望の象徴」でもあるとし、5人の作家による「木と再生」をテーマにした作品を公開する。担当学芸員の田村麗恵(よしえ)さんは「90周年を機に、祝祭的な展覧会にしたかった」と話す。
仏像修復を学んだ土屋仁応(よしまさ)さんは、平和な世に出現する「麒麟(きりん)」や不死鳥の「鳳凰」、「獅子」の新作3点を含む13点を展示。田窪恭治さんは割れたイチョウの周囲に、コルテン鋼のブロックを敷き詰める作品ほか11点を発表。このエリアは通常、一般の立ち入りはできず、同作によって「東京大空襲で被災したイチョウに再び光を当てる」ことになった。丸太3500本と陶ブロック5万個を組み合わせて作られた國安孝昌さんの大型作品は「生命の躍動感を感じさせる」ような渦巻きが特徴。
「全館を会場に」という思いから、美術情報室に展示された須田悦弘さんの「露草」は、設置場所の不明な作品を「自ら探す」ものに。8月6日に行われた公開制作では、上野公園に生える草の写真を基に、「雑草」の作品を追加。展示を締めくくる舟越桂さんは「人間の存在を肯定する強いメッセージ」を感じさせる作家で、同展では新作「海にとどく手」を含む16点を発表。
「木の作家でも表現が多様で、素材の奥深さを知った」と話す田村さん。「見る人が幸福を感じ、実物でないと分からないアートの魅力が伝えられたら」と思いを込める。
開館時間は9時30分~17時30分(金曜は20時まで)。月曜休館。料金は、一般=800円、学生=400円、65歳以上=500円、高校生以下無料。10月2日まで。トークショーは18時30分~19時30分。田村さんのギャラリートークは9月4日・10日・17 日の14時~15時。いずれもチケット半券で参加可能。